そもそも直立二足歩行は、身体の重心を骨盤の上に置いて歩くのが理想です。
そうした理想の状態では、足の裏前方に置かれていた体重が、踵から土踏まずの方向へ、少し外側を抜けて、足の付け根(親指側)へ移動します。
そして、最後に蹴り出すことで身体が前に進みます。
この動きを総称して「ローリング動作」と呼びます。
この動作は、人が疲れずに長く歩くことに合った歩き方ですが、動作をスムーズに行うためには、骨盤の上に重心を載せることが大切になります。
本来、人間の背骨は『S字湾曲』を描くことで、重たい頭を指させることができています。
ところが、加齢や事故など、何らかの原因でその形が崩れると、骨盤の上に重心を置くことが難しくなります。その結果、人は無意識のうちに全身を使って『S字湾曲』を描こうとします。

良い例として、腰が曲がった高齢者の方が歩く時、自然に腰を引いて、顎を突き出すようにします。
これは、背骨が支えきれない重さを、身体全体をS字にすることでカバーしようと、本能的に身体が行動を起こすからです。
もちろん、ご本人には、そういう姿勢である自覚はなく、若い頃と同じような形で歩いていると思っていますが、実際には違っているのです。
つまり、S字カーブは身体のバランスを調整する役割もしているため、どこか一部分のカーブでも崩れたなら、全身のバランスが崩れてしまうということになります。
しかし、このように失われた理想的な姿勢を維持したり、また改善したりする方法があります。
それが「ノルディック・ウォーク」なのです。二足歩行が困難になった人でも、手に2本のストックを持つことで、生物として本来、持っていた四足歩行の力を蘇らせて、再び正しい姿勢での歩行ができるようにすることが可能になります。