手術後は、傷の痛みや、疲労が必ず起こるものだと思っている方が多いため、翌日からの歩行許可などにびっくりされる方が少なくありません。もちろん手術の大きさにより違いはありますが、 最近は疼痛管理も重要視されており、様々な方法が取り入れられ、術後の痛みはかなりコントロールできるのでご安心下さい。痛みと言うよりも手術の部位が重だるく感じる程度です。
疼痛管理が発達したので手術の目的のひとつである、早期離床が可能となって来ました。早期離床の最大の利点は、ベッドから離れる行為自体が全身の筋肉を使うという点です。全身の筋肉を使うと、体の中に流れる血流も早くなり、全身の臓器に刺激がおこり、機能が回復しやすくなります。つまり、寝たきりにともなう、痴呆の進行、関節の固さ(拘縮)、筋力低下、免疫機能低下、その他多くの合併症が防げる訳です。それが可能であれば、怪我をした後や、手術した後に起こりうる様々な合併症を大きく予防でき、スムーズに、リハビリテーションという大切な治療に移行できる訳です。
ただし、大腿骨近位部骨折は、時間をおかず適切な処置をすれば基本的には予後は良好ですが、全員の方が順調に回復するわけではなく、中には手術までの待機期間が長かったり、手術は成功しても合併症が起こったり、痛みがなかなかとれなかったりする方もいて、歩行ができない場合もあります。
しかし、繰り返しになりますが、大腿骨近位部骨折におけるリハビリテーションはできるだけ早く取り組む方がよく、もし痛みを我慢できれば、手術前であってもなるべく上半身は起こす方がいいいですし、上肢や骨折していない足の運動もした方がいいといわれています。
福井智一氏
医療法人医誠会
医誠会病院
整形外科